【本】【感想】お金2.0 新しい経済のルールと生き方

大学に入りたての頃に読んだWeb進化論で、初めてweb2.0という言葉を知った。

 

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

 

 

Web進化論で書かれていたことは本当に現実になったのだろうか?もう10年以上前のことで内容をを覚えておらず、確かめるには再読するしかないが、それもまた気がのらない。

少なくとも「〇〇2.0」という言葉は、この本以降、様々な分野で使用されてきた。どれも、「既存概念から大きく進化する」というニュアンスで使用されている(と、思われる)。

で、あるのに、10年以上前に発明されたネーミング法をいまだに使用しているという点で自己矛盾があるのでは?と、うがった見方をしてしまう僕は、「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」を長らく積読してきた。

しかし、友人が最近読んだ本としてこの書籍を挙げていたこと、Kindli Ulimitedで無料で読めるとのことだったので、意を決して読んでみた。

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

 

 

お金の原点は、従来は物々交換のみにより成り立っていた小さな社会で、より地理的・時間的に遠くの人とのモノの交換を可能にするために貝殻などを使用始めたことにさかのぼる。

貝殻がより価値のある貴金属となり、金(Gold)で価値を保証された通貨となり、近代では中央集権国家が価値保証した通貨を発行するようになった。

さて、現在はどうか。

2017年頃から一般に有名になり始めたビットコインをはじめとする仮想通貨は、中央集権ではなく分散化が特徴だ。

 

新しいテクノロジーの発達によって、経済は住む対象ではなく「作る」対象に変わりつつあります。かつて、経済を作るのは国家の専売特許でした。造幣局を作って金銀銅から硬貨を製造し、偽造が難しい技術を織り込んだ紙幣を大量に発行して、中央銀行通貨供給量をコントロールするなど、経済を作るには莫大なコストと権力が必要でした。  今はスマホブロックチェーンなどのテクノロジーを使えば、個人や企業が簡単に通貨を発行して自分なりの経済を作れてしまいます。ブロックチェーンを活用すれば価値を移転する際に発生する利益もネットワーク全体に保存されるため改ざんも困難です。 つまり、今目の前で起きているのは「経済そのものの民主化」なのです。

現在の法定通貨も数十年前は金と結びついており、ただの紙に過ぎない紙幣は金塊の価値に支えられていました。その後、金本位制の終了と共に、紙幣の価値を下支えするのは「国家の信用」のみとなりました。

 

価値を持っているのは"通貨"だけではない。

昔から「お金で買えないもの」もたくさんあったが、「お金で買えないものをお金に換えられるようになった」というのが、本書の肝。

「知識」は昔からお金に換えやすいものであったが、「信頼・信用」や「熱量」といった目に見えないものはテクノロジーの進歩によって徐々に可能になってきた。

  

その当時は、知識は聖職者や貴族などの一部の人たちに独占されている状態にあり、市民は知識を入手する方法がなかなかありませんでした。 15 世紀にドイツのグーテンベルク活版印刷技術を発明し、書物を安価に大量生産できるようになったことで社会は劇的に変わっていきます。一般市民が安く書籍を購入できるようになり、人類は知識を蓄積し共有できるようになりました。  そこから思想や哲学などの学問が生まれ、図書館や大学などの近代施設が作られていきました。知識を保存し共有できるようになった人類は急速に文明を発達させていきます。その後、産業革命が起こり、王様や聖職者は歴史の表舞台から姿を消します。代わって、資本主義と民主主義を味方につけた商人・知識人・軍人が社会の主役として何世紀にもわたって現代社会の基礎を築いていきます。

  

お金を稼ぐにはどうすればよいのか?様々なモノが換金可能になった現在、今までのような方法にとらわれる必要があるだろうか?

数年前まではYoutubeでここまで稼げるとはだれも思っていなかったし、動画Live配信の投げ銭で数千万を稼ぐなんて誰が想像しただろう?

ツイートやインスタ1投稿で数百万をもらう人は何がちがうのか?

これらのお金はいったいどこから来るのか?

ここに、これからの時代をより良く生きるヒントがある。 

 

手段の多様化により人々が注力するポイントが「お金」という手段から、その根源である「価値」に変わることは予想できます。 価値を最大化しておけば、色々な方法で好きなタイミングで他の価値と交換できるようになっていきます。「価値」とは商品のようなものであり、「お金」とは商品の販売チャンネルの1つみたいなものです。  例えば、貯金ゼロ円だけど多くの人に注目されていてツイッターのフォロワーが100万人以上いる人が、何か事業をやりたいと考えたとします。すぐにタイムライン上で仲間を募り、クラウドファンディングを通して資金を募り、わからないことがあればフォロワーに知恵を借りられます。  この人は、〝他者からの注目〟という貨幣換算が難しい価値を、好きなタイミングで人脈・金・情報という別の価値に転換することができます。

グーグルは検索エンジンAndroidYouTubeで得られる情報をデータとして蓄積し、それをAdWordsの広告システムで好きな時に現実世界の売上利益といった資本に転換する手段を持っています。現在の会計基準では情報(サーバ上のログ)を資産として計上することはできませんから、私たちがPL/BSから見る会社の規模と、現実世界での影響力に大きなギャップを感じると思います。

グーグルにとっては情報という「価値」も、売上利益という「お金」も、単位が違うだけで同じように映っているのかもしれません。彼らの持つ情報量があれば売上 20 兆円ぐらいは出せなくはないと思います(課金機会と広告露出を増やせば良いので)。もし情報をお金に転換する量を意識的に調整しているのだとしたら、実体はもっと巨大ということになります。お金が企業をコントロールするのが資本主義ですが、彼らの場合は企業がお金をコントロールしていると言えます。

 

社会は大きく変化している。

長らく続いた資本主義社会は、価値主義社会に移行していく。

今後は、可視化された「資本」ではなく、お金などの資本に変換される前の「価値」を中心とした世界に変わっていくことが予想できます。   私はこの流れを「資本主義(capitalism)」ではなく「価値主義(valualism)」と呼んでいます。 2つは似ているようで別のルールです。資本主義上で意味がないと思われる行為も、価値主義上では意味がある行為になるということが起きます。

 

この流れに取り残されないためには、僕は何すれば良いのか?

 自問自答は続く。 

 

 

(その他のハイライト)

膨大なデータさえあれば現在人間がやっている知的労働の大半が自動化されるようになると知性さえも人間に固有の強みではなくなってしまう可能性が高いです。   世の中に膨大なデータが溢れたことで進んでいく「自動化」と、ネットワーク型社会に移行することで起きる「分散化」という2つの大きな流れは、今後の 10 年を考える上で非常に重要になります。  そして、 この2つが混ざった時に起こる「自律分散」というコンセプトが、多くの産業のビジネスモデルを覆すことになると私は思っています。 「自律分散」とはあまり聞きなれない言葉ですが、全体を統合する中枢機能を持たず、自律的に行動する各要素の相互作用によって全体として機能する仕組みと定義されています。

この持続的かつ自動的に発展していくような「経済システム」にはどんな要素があるかを調べていった結果、5つほど共通点があることに気がつきました。  ① インセンティブ、 ② リアルタイム、 ③ 不確実性、 ④ ヒエラルキー、 ⑤ コミュニケーション、の5つです。

現代は生物的な欲望よりも社会的な欲望が目立ってきていて、中でも頭文字を取って3M(儲けたい・モテたい・認められたい)の3つが欲望としては特に強く、これらを満たすようなシステムは急速に発展しやすいです。

例えば、古代ローマの「フォルム」や古代ギリシャの「アゴラ」など、都市の公共広場は政治的にも宗教的にも非常に重要な役割を担っていたことは有名です。

最初から完璧なシステムを作ろうとせずに、寿命が存在することを前提にし、寿命がきたら別のシステムに参加者が移っていけるような選択肢を複数用意しておくことで、結果的に安定的な経済システムを作ることができるようになります。

例えば、ビジネスで、プラットフォーム戦略を考える時には、この寿命の概念はよく出てきます。 フェイスブックは若者のユーザー離れも想定してワッツアップやインスタグラムも買収しています。  

かつて、フリードリヒ・ハイエクという学者は「貨幣発行自由化論」を発表し、 国家が中央銀行を経由して通貨をコントロールすることは実体経済に悪影響を及ぼすとし、通貨の国営化をやめるべきだ と主張しました。現代では考えられないことですが、当時は国家が通貨をコントロールすることは常識ではなかったことがわかります。   ハイエクは、市場原理によって競争にさらされることで健全で安定した通貨が発展すると考えていました。 経済学が好きな人にとっては、ビットコインはこのハイエクの思想を体現した仕組みのように映っているはずです。

また、ドイツ人経済学者のシルビオ・ゲゼルは、『自然的経済秩序』という著書の中で、 自然界のあらゆるものが時間の経過と共に価値が減っていくのに、通貨のみは価値が減らないどころか金利によって増えていくことを指摘し、それは欠陥だ と主張しました。それを解決するアイディアとして、価値が時間と共に減る自由貨幣(スタンプ貨幣)を考え出しました。  これは一定期間に紙幣に一定額のスタンプを貼らないと紙幣が使えなくなる仕組みで、まさに利子と真逆の概念を取り入れています。これによって通貨が滞留してしまうことを防ぎ、経済の新陳代謝を強制的に促すことも可能になります。これはアプローチは違えど、ピケティが提案した資産を所有すること自体に税金をかけるべきといった資産税に近い概念です。

ただ ビットコインが他の学術的な思想とも、ただの新技術とも違うのは、この経済システムに参加する人々が何をすれば、どういった利益が得られるか、という報酬が明確に設計されている点です。  マイナーや投資家(投機家)などを〝利益〟によって呼び込み、ブロックチェーンなどの〝テクノロジー〟で技術者の興味を引き、その〝リバタリアン的な思想〟によって社会を巻き込んで、システム全体を強固なものにしています。

製品やアイディアで勝負する時代から、ユーザーや顧客も巻き込んだ経済システム全体で競争する時代に変わってきています。

① 明確な報酬があること、そしてその報酬は生物的な欲求と社会的な欲求を満たすものであること、と前述しました。  一方で、 脳の報酬系は欲求が満たされた時だけではなく、報酬が「期待できる状態」でも快楽物質を分泌することがわかっています。

つまり、この「分散化」という現象は近代までの社会システムの前提を全否定する大きなパラダイムシフトであり、中央集権的な管理者からネットワークを構成する個人への権力の逆流、「下克上」のようなもの

そこではいかに優れた経済システムを設計できるかが全てです。遊休資産を活用して収入を得たい個人を対象に、適切な報酬の設計を行い、誠実に運営をして顧客満足を追求する人はレビューによって評価を可視化され、さらに多くの収入を得ることができるようにする。ユーザー同士がチャットやコメントを通してコミュニケーションを取れる機能を提供し、ユーザーの手によって勝手に発展していくようなサイクルを作る。  シェアリングエコノミーは、ネットワーク化した個人を束ねて1つの経済システムを作り、人間には煩雑な支払いや中立性を求められるレビューのような最低限の機能だけを代理人として提供する立ち位置です。  それは 近代の「代理人型社会」とこれからの「ネットワーク型社会」の良いところを混ぜたハイブリッド型のモデルと言えます。

一方、中国はここ 10 年で急激に成長したので、既存の社会インフラが整備されていないことが多いです。そのため、新しいサービスが出てくるとものすごい勢いで一気に浸透します。このような現象は「リープフロッグ現象」と呼ばれます。

上海のショッピングモールもレストラン以外はガラガラです。 私の会社の中国のメンバーも「財布を落としても使わないから1週間気づかなかった」と話していました。

通常のビジネスとトークンエコノミーでは収益の出し方や利益に対する考え方が全然違うので頭の切り替えが必要です。   通貨を発行する存在が手にする利益を「シニョリッジ(通貨発行益)」と言い、国家の大きな財源になっています。超単純化してしまうと、通貨を発行するのにかかったコストから通貨の価値を引いた差額が通貨発行者の利益になります。また、通貨の所有者がいなくなってしまった場合などの失効益も発行者の利益になります。

トークンエコノミーでは、トークンを発行する企業や個人がこの通貨発行益を享受できますが、一方で発行者はトークンをもって経済圏の参加者の利益を最大化する義務が発生します。 日本円を発行する日本政府が景気安定や治安の維持などの義務を負うのと同じです。

トークンエコノミーでは、経済圏への参加者が増えれば増えるほど経済圏としての価値が上昇する「ネットワーク効果」が働きます。 トークンもそれを信頼して受け取ってくれる人がいなければ何の意味もありません。  その経済圏に魅力を感じて参加してくる人が増えると、トークンを欲しい人が増えて好きなタイミングで手放せるので、それを持ち続けるリスクも減ります。  さらに参加者が増えることでそのトークンでの支払いを許可してくれる店やサービスも増えて、利便性が高まることでさらに参加者が増えるというように、自己増殖的に経済圏を拡大することができます。

実際に安価な電気代を強みにマイニングのシェアを取った中国のマイナーが、ビットコインの仕組みを自分たちの都合の良いように改変しようとしましたが、それに反対する人たちが別の仕組みを提唱して揉めて、結果的にビットコインビットコインキャッシュの2つに分裂しました。  このように 特定の存在が経済システム全体をコントロールしようとすると、それに反対する人が離反して経済圏の価値が下がってしまうか、分裂してしまうことになるので、独占や支配が難しい仕組みになっています。

また、 中国ではSNSやスマホの決済に紐づいた信用スコアが存在していて、悪事を働くとこのスコアが下がり、SNSやスマホ決済の利用が凍結される可能性があります。 スマホで決済ができなくなると事実上あらゆるサービスで支払いができなくなり、圧倒的に不便です。  コンビニに入る時にSNSと決済のアカウントを認証しない限り入れないので、 ここで悪事を働くことは「割にあわない」と思わせることで犯罪を抑止しています

ただ、 世の中に流通しているお金の流れの9割近くは資産経済のほうで生まれています。 普通に生きている多くの人からすると日々の生活で服を買ったりご飯を食べたりするために使っているお金の流れが、全体のお金の流通の1割にも満たないと言われると不思議に思われるかもしれません。株で食べている人や、金利収入で食べている人なんて滅多に見当たりません。

しかし、 統計上の数字では間違いなく多くの人が馴染みのある消費経済ではなく、少数の人が回す資産経済が大半のお金の流れを作っています。

この1割ほどの消費経済の上に、9割の資産経済が乗っかって、全体の経済が成り立っています。資産経済は消費経済からの金利や手数料で成り立っているため、消費経済が少し変わるだけで大きく動いてしまいます。地震が起きた時の1階と100階を想像してもらえるとわかりやすいでしょう。  そして、今はこの消費経済に対する資産経済の割合はどんどん大きくなっていて、経済はより不安定な状態になっていっています。むしろ、人々は消費をしなくなっていて、先進国に関して言えば消費経済は縮小すらし始めているようにも感じます。ミニマリストが増え、ユニクロの製品のように安くて良いものが手に入り、車や家を購入しなくても普通に生きていけます。  一方で、 資産経済はどんどん拡大を続けていて、世界中で金融マネーは投資先を探してさまよっています。 もう利回りの良い金融商品などなくなってきているため、お金はあるけれど使う対象がないといった状況にあるわけです(あくまで資産経済の話)。日本では企業の内部留保金も過去最高の406兆円となっています。

このように、資産経済の占める割合が大きくなりお金は色々なところに滞留し始めており、むしろ投資先のほうが枯渇している状況です。   資金調達が容易な環境にあるため、相対的にお金の価値そのものが下がり続けています。 逆に、増やすことが難しい、信頼や時間や個性のようなお金では買えないものの価値が、相対的に上がってきているとも言えます。

フェイスブックの最大の価値はユーザーのデータであり、これらの価値をお金に換えていないだけでした。 もしこういったユーザーの行動データも資産として企業価値に反映させることができれば、こういった認識のズレも生まれなかったはずです。金融の枠組みはどんどん現実世界の価値を正しく認識できなくなっています。

ワッツアップはその価値を現実世界の「資本」に転換する仕組みをまだ作っていないだけで、その転換をいつやるかというタイミングの問題になります。フェイスブックの 18 兆円近い時価総額も世界 12 億人のソーシャルグラフという「価値」に支えられているので、彼らが資本の根源であるその価値を見て2兆円を払うのは、理にかなっていると考えられます。

資本主義で一番大事なことは資本を最大化すること、簡単に言えば「お金を増やすこと」を追求することです。どれだけ人々が熱中して膨大なユーザーがサービスを利用してくれていても、それらが「お金」という形に換えられなければ資本主義経済では存在しないものとして扱われてしまいます。逆に、実際は価値がないものであっても、それをうまくお金・資本に転換できさえすればそれは評価の対象になってしまいます。  価値主義ではその名の通り価値を最大化しておくことが最も重要です。価値とは非常に曖昧な言葉ですが、 経済的には人間の欲望を満たす実世界での実用性(使用価値・利用価値)を指す場合や、倫理的・精神的な観点から真・善・美・愛など人間社会の存続にプラスになるような概念を指す場合もあります。

またその希少性や独自性を価値と考える場合もあります。欲望を満たすための消費としての価値は既存の資本主義経済では一般的に扱われているものですが、価値主義で言う価値とはこの使用価値に留まりません。  興奮・好意・羨望などの人間の持つ感情や、共感・信用などの観念的なものも、消費することはできませんが立派な価値と言えます。価値主義における「価値」とは経済的な実用性、人間の精神にとっての効用、社会全体にとってポジティブな普遍性の全てを対象にしています。

あらゆる「価値」を最大化しておけば、その価値をいつでもお金に変換することができますし、お金以外にものと交換することもできるようになります。お金は価値を資本主義経済の中で使える形に変換したものに過ぎず、価値を媒介する1つの選択肢に過ぎません。

評価経済や信用経済も、注目や関心を集めるために、共感や好意を犠牲にしたり、倫理感や治安を犠牲にするような行為が目立つようになると、資本主義と同様に世の中がブレーキをかけるようになります。 ある意味、多くの人が違和感を持ってこれらに接していることがブレーキの役割になっているとも考えられます。

ソーシャルキャピタルは、個人が繫がってできている社会が持続的に良い方向に発展していくために必要な「社会的なネットワーク」を「資産」と捉えるという考え方です。

既存の経済ではマネーキャピタルを増やすことがうまい人(経営者・投資家)が大きな力を持っていましたが、これからはソーシャルキャピタルを増やすのに長けた人も大きな力を持つようになる と思います。

かつて企業は情報格差や政治的特権を活用して利益を上げることができました。今は消費者がネットを使ってあらゆる選択肢を調べて自力で最良の選択ができるようになってきています。ネットの集合知のおかげで消費者が劇的に賢くなりました。これからの時代は本当に価値のあるサービスを提供しない限りは利益を出しにくい、価値と利益がイコールで結びつく時代だと思っています。

当然ですが、お金の相対的な価値はさらに下がります。 現在はお金には人を動かす力がありますが、生活するためにお金を稼ぐ必要のなくなった人からすれば、お金はもっとあったら便利なものであり、なければならないものではなくなっているはずです。 なので、お金からは人の行動を変える魅力は失われます。現在の経済では最も強力なお金を稼ぎたいという欲望(金銭欲)が、報酬として機能しなくなることが想像できます。  そうなってくると、 ベーシックインカム導入後の人間は、今私たちが知っている人間とは全く別の生き方をするようになっているかもしれません。 現代の多くの意思決定の背後には儲かるかどうかという視点が深く関わっています。就職する場合に人気の企業は給料が高く潰れない企業です。そしてそういった会社に就職するためには偏差値の高い大学の卒業生であることが求められます。また、結婚相手の条件は、年収が重要視されます。生きていくこと=お金を稼ぐことというのが常識だからです。  けれど、ベーシックインカムが普及したらその常識は間違いなく崩れます。働いてお金を稼がなくても生きていくことができるとしたら、お金を大量に持っていても今ほど羨ましいと思われることもなくなります。そうするとお金を稼げることが大きな強みではなくなってしまい、お金を稼ぐ能力も今ほどの価値はなくなります。

通貨の「アンカー」とは文字通り、船が流されないように下ろす碇のように、通貨がふわふわと消えてしまわないように価値を下支えする「重し」を指します。アンカーの実在性が高いほど通貨は安定します。 少し前は国家の発行する通貨のアンカーは金塊(ゴールド)でしたが、現在は実質的には主要国の信用のみとなりました。通貨というほどにまではなっていませんが、明確な資産として世の中に認められているものの1つに、時間と対をなす概念である空間(不動産)があります。

Gumiの國光宏尚社長と食事をしている時に彼が「トークンネイティブ」 という言葉を使っていて、非常に的を射た表現だと思いました。トークンネイティブの世代は、生まれた瞬間からビットコインブロックチェーンに当たり前に触れて使いこなすことができ、今の私たちとは全く違う視点でお金や経済のことを捉えていることでしょう。その時には自分のようなデジタルネイティブの世代が思いつきもしないサービスがどんどん生まれるはずです。 デジタルネイティブ世代はトークンネイティブ世代が作るサービスが理解できなくなり、「規制が必要だ」という話をしているかもしれません。

イギリスの作家ダグラス・アダムスが生前に面白い言葉を残しています。  人間は、自分が生まれた時にすでに存在したテクノロジーを、自然な世界の一部と感じる。 15 歳から 35 歳の間に発明されたテクノロジーは、新しくエキサイティングなものと感じられ、 35 歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる

内面的な価値が経済を動かすようになると、そこでの成功ルールはこれまでとは全く違うものになり得ます。 金銭的なリターンを第一に考えるほど儲からなくなり、何かに熱中している人ほど結果的に利益を得られるようになります。つまり、これまでと真逆のことが起こります。

この世界で活躍するためには、他人に伝えられるほどの熱量を持って取り組めることを探すことが、実は最も近道と言えます。そして、そこでは世の中の需要だったり、他の人の背中を追う意味は薄くなります。なぜなら、内面的な価値ではオリジナリティ、独自性や個性が最も重要だからです。 その人でなければいけない、この人だからこそできる、といった独自性がそのまま価値に繫がりやすいです。

本の学校教育とは反対の、「モンテッソーリ教育」という、子供の興味をとことん伸ばしていくという教育法が注目されています。グーグル、アマゾン、フェイスブックの創業者はいずれもこの教育を受けていたと言われています。

ICOと呼ばれる仮想通貨ベースでの資金調達の額は2017年中盤でも2500億円を突破し、これはベンチャーキャピタルが出した金額を上回っています。 かつてはグーグルやフェイスブックなどの新たなテクノロジー企業にリスクマネーを供給したのはベンチャーキャピタルでしたが、今は仮想通貨によるICOがその役割を担いつつあります。

ただ、ここまで読んでくださった方々であればおわかりでしょうが、これらの役割は国家の専売特許ではなくなりつつあります。人々がオンライン上で過ごす時間が多くなればなるほど、現実世界の領土の広さはさほど重要ではなくなります。

つまり、VR/AR/MRやBMIが発達していくと、人間は「現実」そのものを選択できるようになる可能性が高いです。いくつかの現実のチャンネルを切り替えて、自分が最も居心地が良い世界を自分にとっての「現実」と選択するようになります。 突拍子もないような話に聞こえますが、現在でも、2次元のネットの中をメインの現実として生きている人もいます。

アインシュタインがこんな言葉を残しています。  空想は知識より重要である。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む。  大切なのは、疑問を持ち続けることだ。神聖な好奇心を失ってはならない。  アインシュタインは、当時絶対的な真理とされていたニュートンが発見した「常識」を覆しました。そしてそのアインシュタインが発見した世界の見方すらも、たった今新しい発見によって覆されようとしています。

 

【本】【感想】生涯投資家 -村上世彰-

 

生涯投資家 (文春e-book)

生涯投資家 (文春e-book)

 

 

2006年、ホリエモンとともに行ったニッポン放送株の買収騒動は、既に13年前(!)。同時学生だった僕の村上世彰に対する印象は「ホリエモンを陰で操ったお金が大好きな悪いおじさん」というものだった。

しかし、この本を読めば、彼が何を志して何をやり遂げたかったのかがクリアになる。決してお金のためではなく、お金(投資)によってどうしても成し遂げたいことがあったのだ。

その一つが「日本企業におけるコーポレートガバナンスの拡充」であり、この実現のために村上ファンドを立ち上げ、「モノ言う株主」となった。

コーポレート・ガバナンスとは、投資先の企業で健全な経営が行なわれているか、企業価値を上げる=株主価値の最大化を目指す経営がなされているか、株主が企業を監視・監督するための制度

 

投資家の視点から書かれたこの書籍は、上場を目指している者にとってはとても参考になる。

投資家は何をもとめ何を見ているのか。そのために、企業としてどうすればよいのか。考える機会にとてもよかった。

 

公器になった企業は決められたルールに従って、投資家の期待に応えるべく、透明で成長性の高い経営をしなくてはならない。企業は株主のために、利益を上げなければならない。

「期待値」のほか、私が投資判断を行なうにあたって重要視している指標がIRR(内部収益率、Internal Rate of Return) だ。手堅く見積もっても、IRRの数字が一五%以上であることが基準となる。

無借金だった二〇一二年以降、Appleは資本還元プログラムに使う原資を、社債の発行や借り入れによって賄った。そしてこのプログラムを開始してからも、四年で総資産は二倍近くに増えている。だが積極的な株主還元を行なっているため、純資産はほとんど増えていないことがわかる。  最近では事業の成長性に陰りが見え始め、株価が右肩上がりという状態ではない。しかし適度なレバレッジ、積極的な株主還元、自社株買いによる株価の下支えもあって、Appleの株価はPBR六倍程度、PERも十八倍程度の高い水準で推移している。社債の発行や借入を含めて資金を循環させることで、より高い利益を上げている好例だ。

 

一方で、上場後の経営者の持分比率をいかに高めておくかに頭を悩ましている僕にとって、耳の痛い指摘もある。そもそも上場をする必要があるのか?と投げかけられる。

 

株式発行による直接金融で資金を調達する必要のない企業は、上場を廃止して非上場になることを検討すべきだと思う。特に近年流行った「買収防衛策」を導入するような企業は、本当に買収されることを回避したいのであれば、非上場化すべきだ。買収防衛策に限った話ではない。

上場企業が買収されることをリスクと考えるのなら、買収防衛策や持ち合いといった保身的な意味での対策を取るのではなく、コーポレート・ガバナンスを徹底し、企業価値の向上に注力することだ。それこそが、買収されるリスクを下げる有効な手段だ。株価の高い企業は乗っ取られない。それは世界の常識だ。

繰り返しになるが、もう一度強調しておきたい。上場している会社の株式は、誰でも売買できる。上場企業はそのリスクとコストを踏まえた上で、それでも必要がある場合のみ、上場を維持するべきだ。「意義や必要性はわからないが、とりあえずステータスとして上場していたい。でも、自分が嫌いな相手には株を持ってほしくない」という姿勢は、上場企業として通用しない。

 

彼はまだ投資家を続けている。

自分の信念を達成するために、ファンドではなく、自分だけのお金で。

 

僕も将来は投資家になりたいと、率直に思った。

 

 

その他ハイライト

父はいつも「上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。一番安いところで買ったり、一番高いところで売れるものだと思うな」と言っていた。まさにその通りだった。

村上ファンドを立ち上げて、私は有名なファンドマネージャーになった。一方で私は、時代遅れの投資家なのだということもひしひしと感じる。二〇〇〇年代に入ってからITブームが来て、有形資産をもたないIT企業の株価が「成長性」をもとに高く評価されているが、私には理解できない世界だ。「売上が毎年倍になっていって」とか、「今は赤字だけど、十年後には一千億円の利益を出します」という事業計画を、精査するスキルが私にはない。だから、IT企業への投資を躊躇してきた。  私の投資は徹底したバリュー投資であり、保有している資産に比して時価総額が低い企業に投資する、という極めてシンプルなものだ。

日本の企業で通常行なわれているのは、候補者別に賛否を問う方法だ。これでは大株主の意向が通りやすく、少数株主の意見は反映されにくい。累積投票制度は日本でも会社法三百四十二条で規定されており、株主総会の五日前までに、株主が株式会社に対して請求すれば可能になる。しかし実際は、定款で累積投票制度を導入しないと規定している会社がほとんどだ。

「上場するというのは公器になったということであり、誰でも市場で株式を購入できる状態になること。ファンドにしても、安ければ買う、高ければ売るのはビジネス上当たり前。上場している以上は、誰が大株主になっても、自分はその株主の下で企業価値を向上させ、会社を運営していく」(ホリエモン)

 

 

 

 

生涯投資家 (文春e-book)

生涯投資家 (文春e-book)

 

 

 

 

【本】【感想】NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く~

 

NETFLIXの最強人事戦略?自由と責任の文化を築く?

NETFLIXの最強人事戦略?自由と責任の文化を築く?

 

  

僕が、TV放送ではなく、動画を日常的に見るようになったのはここ2,3年だと思う。

最初はYoutubeで無料の"神業"動画系を見るのみだったものが、2017年にAmazon Primeの会員に4年間知らずに入会していたことに気づいて海外ドラマを見はじめた。

2018年からはNetflixの会員になった。今ではNetflixが一番視聴時間が長い。

 

最近、織田裕二主演のドラマ・映画を見るのにはまっている。

映画では、エリート公務員の成長を描いた「県庁の星」、余命宣告を受けた夫が妻の再婚相手を探す「ボクの妻と結婚してください。」が面白かった。
ドラマでは悪徳医師を描いた「振り返れば奴がいる」、貧乏生活の「お金がない」など、昔のドラマを懐かしみながら楽しんだ。

織田裕二のセリフの中で印象に残っている一つに、「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」のクライマックスで青島が放ったセリフがある。

「リーダーが優秀なら、組織も悪くない」

子供だった僕にはなぜかカッコよく聞こえた(なんと16年前!)。

 

(閑話休題)

 

今回読んだ本は、Netflixの組織論。

日本のTSUTAYAやゲオのように、昔は米国国内でDVDレンタルを行っていたこの会社が、いかにしてストリーミング配信で世界トップに上り詰めたか、人材戦略の観点から解説している。

いろいろ示唆に富む内容ではありましたが、簡潔にNetflixの人材戦略を表すのであれば次のようになると思う。

 

①ハイパフォーマーの人材のみ採用し、②従業員一人一人が真に求めるものと会社の目指すものを一致させることができれば、会社は成長する。

 

 

①ハイパフォーマーの人材のみを採用

ハイパフォーマーを採用することは一石二鳥、三鳥になるとのこと。ハイパフォーマーがハイパフォーマーを呼ぶということでしょうか。

このとき私たちは最初の重要な気づきを得る。それは、最高の結果を出せる人だけが会社に残っていたということだ。したがって経営陣が従業員のためにできる最善のことは、一緒に働く同僚にハイパフォーマーだけを採用することだと学んだ。これはテーブルサッカーの台を設置したり、無料で寿司を提供したり、莫大な契約ボーナスやストックオプションを与えたりするよりずっと優れた従業員特典だ。優秀な同僚と、明確な目的意識、達成すべき成果の周知徹底──この組み合わせが、パワフルな組織の秘訣である。

私の経験からいうと、ハイパフォーマーはすべてがうまくいっていることに満足しているというよりは、むしろチームの仕事ぶりに不満をもっていることが多い。最高の成果を強く求めるからこそ、それを達成しようとするなかで必然的に痛みや不満を感じるのだ。従業員にもってほしいのは最高を追求する姿勢であって、まじめに働きさえすれば会社が守ってくれるだろうという安易な気もちではない。

とはいえ、現実では、ハイパフォーマーを採用し続けるのは困難を極めます。良い企業は採用活動に力を入れていますが、本書でも採用活動を会社の最重要事項の一つと位置づけるべきと説いています。

採用面接は、マネジャーが予定しているどんな会議よりも優先され、また役員会の出席者が会議を欠席または中座してよい唯一の理由だった。噓ではない! あなたが候補者を評価するように、候補者もあなたを評価している。そのことを忘れがちだ。

一方で、採用活動とともに重要なのが"解雇活動"。企業は生き物なので新陳代謝を促す必要があり、そこに情は不要であると。

チームづくりで犯しがちなもう一つのまちがいが、今の人材が成長して将来必要な職務を担えるようになると思い込むことだ。これはとくにスタートアップにとって深刻な問題だ。創業者は草創期のチームに強い愛着を感じていることが多い。私がスタートアップの創業者に、会社が成長して業務内容が激変したら、今の従業員の多くはやっていけなくなると指摘すると、たいていこんな返事が返ってくる。「でも彼らが好きだし、みんな一生懸命やっていて、本当にいいやつらなんだ!」。だが考えなくてはいけない。今より大きな規模で仕事ができるだろうか? 今彼らのやっている仕事はこの先も必要なのか? 必要でなくなったら、彼らをどうするつもりなのか?

ネットフリックスでは人材管理に関して3つの基本方針があった。一つ、優れた人材の採用と従業員の解雇は、主にマネジャーの責任である。二つ、すべての職務にまずまずの人材ではなく、最適な人材を採用するよう努めること。三つ、どんなに優れた人材でも、会社が必要とする職務にスキルが合っていないと判断すれば、進んで解雇すること。

「解雇のタイミングを判断することが、会社の求めるスキルをもつ優秀な人材を採用できるかどうかのカギを握る。二つは表裏一体の関係にある。逸材を採用する能力がなければ、いい人たちを安心して放出できない。どっちかだけうまいなんてことはあり得ないし、それじゃ優秀なチームはつくれない」

 

 ②従業員一人一人が真に求めるものと会社の目指すものを一致させる

これを達成させるためには、やはり社内コミュニケーションを密にとる必要があります。

人数の少ないベンチャー企業であっても、情報が共有されていないことから経営判断にゆがみが生じることが多々あります(体験談)。

社内のどの部署、どのチームの問題であっても、従業員がそれを自分のものとして解決するには、経営幹部と同じ視点が欠かせない。この視点があれば、事業のあちこちに潜む問題や機会を発見し、うまく対処することができる。皮肉なことに、企業はいろいろな研修プログラムに多額の費用をかけ、従業員のやる気を高め業績を測定するために膨大な時間と労力をつぎ込みながら、事業のしくみを全従業員に説明するのを怠っているのだ。

皮肉なことに、会社の戦略や事業運営、業績に関する情報のほとんどが、社内で共有されていない。最近の上場企業は、そうした情報を全世界に公開しているというのにだ。決算発表の電話会議に参加する投資家の方が、その会社で働いている従業員よりも、事業の内情にくわしいのはなぜか? 企業は全従業員に対して決算発表を行うべきだ。いや、いっそ本物の電話会議を聞かせたらどうか?

 

(その他ハイライト)

イラク戦争の際、当時国防長官だったドナルド・ラムズフェルドは、戦争中のアメリカ軍のパフォーマンスについて聞かれ、こう答えた。「戦争は手もちの部隊で戦うものだ。将来こうあってほしいと思う軍隊で戦うわけではない」。だが私は優れたチームづくりについてマネジャーと話す際、これとは正反対の方法でとりくむようアドバイスしている。将来こうあってほしいと思うチームをつくる人材を、 今から 採用しましょう、と。

そしてこれを説明するために、「会社は家族ではなく、スポーツチームだ」という比喩を使った。優れたスポーツチームがつねに最高の選手をスカウトし、そうでない選手をラインナップから外すように、ネットフリックスのチームリーダーも継続的に人材を探し、チームを組み換えていかねばならない。

今の人材を、新しい職務にとりくめるように育成し教育するのが得策と考えるなら、経営陣はそれを全面的に支援し、マネジャーが必要なスキルを学べるよう手を差し伸べる。他方、必要なスキルを備えたハイパフォーマーを採用することが最善の選択肢だと思うなら、たとえそのせいで今のメンバーを解雇することになったとしても、真剣に検討してほしいと要請した。

偉大なホッケーのコーチは 10 試合終わるごとに、チームメンバー一人ひとりにパフォーマンスに関する全般的なフィードバックを与えていた。あなたがこれに相当することを自分のチームに対して行うとすれば、何をすればいいだろう?

 

さすが米国企業といったところでしょうか。Netflixのような急成長を遂げるためには、ここまで非情(合理的?)にならないといけないのかもしれない。

Netflixの給与は、googleなどを抑え世界最高水準で、平均約3,500万円(!)。

www.businessinsider.jp

 

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